知る・学ぶ

医療・介護トピックス

介護
自立支援型ロボット介護機器開発を支援
情報誌けあ・ふるVOL.95(2018/4) 掲載

経済産業省 製造産業局産業機械課
ロボット政策室
室長補佐(ロボット政策担当)

石田 智樹さん

重点分野に1分野5項目を追加

 2013年から経済産業省と厚生労働省で進められてきた「ロボット介護機器開発5カ年計画」が終了し、2018年4月からは新たに「ロボット介護機器開発・標準化事業」がスタートしました。3年間で自立支援型ロボット介護機器の開発を重点に支援することを目的としています。これに先だって、2017年10月には開発支援の重点分野に1分野5項目が追加されました。ロボット介護機器の開発・導入の進捗を経済産業省ロボット政策室の石田智樹さんにお聞きしました。

ロボット介護機器開発の現状はいかがでしょうか。

 厚生労働省と連携しながら、介護現場のニーズを吸い上げ、ロボット介護機器の開発につなげる5カ年計画を2013年から推進してきました。これまで5分野8項目を重点分野として支援してきましたが、着実に成果は上がり、商品化した機器も出てきました。
 移乗介助分野では介助動作を支援する装着型のパワーアシスト機器、移動支援分野ではロボット技術で自動制御する歩行器、見守り支援ではセンサー等で離床を検知する機器などが実用化されています。自動制御付き歩行器は介護保険適用対象になり、レンタルで利用できます。
 また、2018年度の介護報酬改定では夜間職員配置加算の要件が改定され、最低1人の職員の配置が必要だったものが、一定の見守りロボットを導入した場合には0・9人で加算できることになりました。加算が実現したのも、見守り分野のロボット介護機器の効果が実証されたからです。 
 装着型のパワーアシスト機器をうまく使っている介護現場では、入浴支援に活用し、介護スタッフの腰の負担が軽減されて、翌日の腰の痛み具合も改善した事例や、同機器を導入したおかげで職員が介護現場に復帰できたという話も聞きました。こうしたことを考えると、この5カ年計画によって一定の成果が得られたと我々は考えています。

今回、重点分野の追加が行われた理由は何でしょうか。

 2018年度からは新たに3年間の計画で、「ロボット介護機器開発・標準化事業」として、今年度は11億円を予算計上し、自立支援に重きを置いたロボット介護機器の開発の支援をしていきます。それに先だち、厚生労働省の事業等で得られた介護現場のニーズに基づいて2017年10月に重点分野に1分野5項目を追加し、合計6分野13項目にしました。
 これまでは介護をする側の業務効率化や腰痛防止など職場環境の改善のためのロボット介護機器を重点的に開発してきました。今後は、介護を受ける側の人がどんどん増えてくるので、特に自立支援に軸足を置いたロボット開発を促進する狙いです。
 新たに追加した項目は、移動支援分野では「装着」です。高齢者など介護を受ける人が装着して、外出をサポートするなど、歩行補助や転倒予防のためのロボット開発を支援します。
 排泄支援分野では「排泄予測」と「動作支援」を追加しました。従来はロボット技術を用いたポータブルトイレ開発を支援していましたが、新たに排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器を対象項目に加えました。自分の排泄のタイミングが分からず、外出に不安がある方々が、より活発に活動できるようになればと願っています。一方、介護者にとっては、おむつを適切なタイミングで交換するために活用できます。
 また、2人の介助者が必要となる排泄の介助で、なるべく手数を減らし、できれば高齢者自身が自分で排泄できるようにすることを目的とする機器を新たに重点項目に追加しました。便座に座ったり、下衣の着脱など一連のトイレでの動作支援をすることを目指します。
 見守り・コミュニケーション分野では「コミュニケーション」を加えました。すでにいろいろなコミュニケーションロボットが商品化されていますが、高齢者の活動を促すようなコミュニケーション機能を持った生活支援機器を新たに項目に追加しました。例えば、バイタルデータなどで健康状態をチェックし、よければ「外に出てみませんか」とか「みんなでリビングで話しませんか」などの促しができる機器の開発を期待しています。
 そして、追加した1分野とその項目は「介護業務支援」です。これまでに開発されてきたロボット介護機器の中には情報が収集できる機器も増えてきました。例えば、パラマウントベッドの「眠りSCAN」なら心拍数や呼吸数のバイタルデータが収集できます。これらの情報を集約して業務支援などに活用する機器の開発を期待しています。
 まずは、センサーやロボット技術を駆使して、効率的に介護に関する情報を集約して個々の皆さんに最適な介護プランを提案するような機器を目指しています。AIの活用もその一つでしょう。

ロボット介護機器開発における課題は何でしょうか。

 介護現場に導入した際の効果が見えづらいという声があったので、機器の効果を明確化していこうと考えています。実際に機器を介護現場で使用して、効果を定量的に測定する事業を実施する予定です。
 さらに、人が直接触れて使用する機器ですから、安全性の担保を重要視しており、新たに追加した分野や項目でも安全性の基準を作ります。
 ロボット介護機器の国内の市場規模は2015年で24・4億円ですが、最終的には約500億円へ拡大することを目指しています。ロボット市場を拡大するためには海外展開も必要となります。すでに生活支援ロボットの安全に関するの国際標準である「ISO13482」を取得している企業もありますが、ヨーロッパではCEマーク(EUの基準適合マーク)も取らないと販売できません。そのためISO認証を得るために行った試験データ等をうまく活用してCEマークで求められる評価試験の一部に充てるなど、ISO認証との連携によってCEマークをより早く取得できる流れを進めていきたいと考えています。昨年12月には国内メーカーの歩行アシスト機器がISO13482を取得するために整えたエビデンスを活用してCEマークを取得できました。こうした連携が定常的にできるようにしていくことで、海外展開もしやすくなると思います。国内だけでなく海外でも普及が進めば、値段も下げられますし、より使いやすくなりますから、こうした連携をさらに進めていきたいと考えています。

福祉用具貸与事業者などへのメッセージをお願いします。

 ロボット介護機器はまだ発展途上にありますが、以前に比べれば介護現場の方々にも身近になっているのではないかと思います。先進的に導入して介護の効率化が図られている事例もいろいろ出てきており、ロボット介護機器に対する意識の変化を感じています。
 ロボット介護機器の利便性を広く知ってもらうために「介護ロボットポータルサイト」(http://robotcare.jp/)を開設しました。ロボットの紹介や介護現場での活用動画なども見ることができます。ぜひご覧いただき、導入を検討する際にも参考になさってください。