PROJECT STORY 医療・介護事業

スマートベッドシステムで、
世界を変える。

かつては手動で背角度や高さなどを変えていた医療・介護用ベッドが電動化して、かなりの時間が経過している。長い年月の間にあらゆる改良が加えられた医療・介護用ベッドに、これ以上の革新は難しいのではないか。そう感じていた中で、スマートベッドシステムのプロジェクトはスタートした。

H.I. 経営企画本部 部長

1991年新卒入社。スマートベッドシステムプロジェクト立ち上げから参画し、一度別のミッションを担うためプロジェクトを離れるが、発売直前の2016年に再度参画。主に販売・プロモーションを担当している。

J.T. 技術開発本部 次長

2002年新卒入社。大学では機械工学を専攻し、入社後は電動ベッドの機械設計を担当。2013年のスマートベッドシステムプロジェクト立ち上げから参画し、主にシステムの開発、導入、保守を担当している。

患者さんの安全につながるように、
医療スタッフの負担を軽減するために。

当時の社長(現会長)を中心に、2013年1月にプロジェクトが立ち上がりました。背景にあるのは日本の高齢化と、それに伴う医療現場の負担増。新型コロナウイルスに関連して、医療現場のひっ迫というニュースを目にした方も多いと思いますが、実はそれ以前から看護師や介護士の方の負担については大きな問題になっていました。

1人で対応する患者さんや入居者さんの数が多すぎるのです。残業や休日勤務も増えてしまいますし、業務量が多くなると抜け漏れやミスが起きてしまうかもしれない。そこで、ベッドで寝ているだけで脈拍や呼吸といったバイタルサインを計測できるスマートベッドシステムの構想がスタートしました。電動ベッドをこれ以上進化させることは難しいのではないか、そう感じていた中で、次世代の製品開発にいち早く着手したわけです。最初の1年は基礎研究をおこない、2014年にベッドのプロトタイプを開発。その後ベッドを含むシステムを構築し、病院での臨床研究で得られた知見をフィードバックして、2017年から製品としての販売を開始しています。

コアとなる技術は、2009年から主に介護施設向けに販売している「眠りSCAN」で実現していました。寝ているだけで睡眠状態、ベッドにいるかいないかをマットレスの下で測定できるセンシング技術。ただ、これだけでは医療機関に訴求する機能としては弱いので、そこにセンサーを活用したどんな機能が必要か、入力業務の省力化や他機器との連携をどうするかといった検証を進めていったわけです。

開発側で苦労したのは、実際の看護業務を学び直す必要があったこと。通常の電動ベッドであれば長年の知見もありますし、営業の方が現場の声を集めてきてくれるので、何をどう改良すべきか判断しやすい状況でした。しかしスマートベッドシステムは、社内どころか社外にも、経験者が1人もいません。看護師さんがベッドサイドで何をしているのか、どんなデータを入力しているのか、どの業務に負担があるのか。患者さんの安全を担保する為にどんな機能が必要になるのか。様々な病院でヒアリングをおこなってプロトタイプを開発したのですが、やはり最初からすべてうまくはいきません。検証とバージョンアップに2年かかったのは、そういう経緯です。

「医療の質・安全の向上」と「業務負担の軽減」という、相反する2つのことを追求しようとしたので、難易度は高かったです。

その通りで、経営者・管理者側と病棟の看護師の方など、ヒアリングする相手の立場によっても求めることは違いますので、最終的な仕様に落とし込むのは難しい作業でした。ただ、看護師の方だけでなく、その先にいる患者さんを守りたいという気持ちがベースにあるので、迷った時には「どちらの方が患者さんのためになるのか」という視点で考えるようにしています。

日本の介護を変え、医療を変え、
そして世界を変えていく。

販売面ではロケットスタートとはいきませんでしたが、これはある意味で想定内の状況です。患者さんのメリットになるシステムなのですが、見え方としては「スタッフさんの負担軽減」という側面が大きい。施設や医院の売り上げに直結する製品ではないので、最初からここに投資する医療機関は少ないだろうと予測していました。しかし一方で、これからさらに高齢化や人手不足が深刻化するこの国において、絶対に必要な製品であることも確信していました。エンドユーザーの方に貢献できるのであれば、ビジネスとしてすぐには芽吹かないであろう領域にあえて踏み込んでいくことも、当社独自のスタンスだと言えるでしょう。

ただ、この数年で医療スタッフの働き方改革が話題に上がるなど、追い風は吹いてきていると感じています。国としても医療現場の皆さんをどうサポートするかについては大きな懸案事項で、例えば2020年の診療報酬改定で、夜間看護体制に係る加算に「ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減」という項目が新たに追加されました。医療機関がシステムを導入する後押しになると思います。

介護現場も医療現場も、導入していただいた施設では大きな変化・進化が生まれています。効果を目の当たりにした政府関係者からは「どうすればもっとスマートベッドシステムを普及させられるか」といった相談も来ています。小さい分野ですが、この国を動かしているという実感もありますね。日本は高齢化の先進国と言われていて、海外からも注目されています。まずは日本国内の介護を変え、医療を変えて、そこから世界も変えていくことができれば、これほど嬉しいことはありません。